「さーわーだっ」 「ん?」
慎の部屋へ遊びに来た久美子は、今日は何故か部屋へ上がってからずっとそわそわしていたのは気になっていたのだけど。 機嫌が悪いのでもなく、楽しそうな嬉しそうな空気を醸し出していたので、自分から言い出すまで待っていたら、そろそろ夕食でも…という時間になってやっと種明かしする気になったらしい。
「えっとな、今日は…外国の冬至らしいな!」 「…冬至?」
外国に冬至があったなんて聞いたこと無い、と思って今日の日付を思い出せば何のことはない
「かぼちゃの日だ!」 「あぁ、ハロウィン?」
ちょっと、かなり、両方の解釈が間違っているが。 今訂正するのもなんとなく水を差すような気がするのでとりあえず黙っておく。
「それでな。沢田甘いの苦手だからお汁粉だと辛いと思って…」
柔らかそうな…実際柔らかい頬をピンクに染めて、自分のかばんから大きなタッパーを取り出しデン!と慎の目の前に、準備宜しく箸と一緒におかれた。
「じゃじゃじゃじゃーん!」 「…かぼちゃ?」 「の、煮物だっ!」 「………」
効果音と共に現れたタッパーの中身は黒い…いやかろうじて茶色っぽくも見える物体がゴロゴロ。 ただよってくる匂いも「なんかの番組の罰ゲームか」と言いたくなるような炭の香りしかしないが、これまでの話の流れから検討をつけてかろうじて素材だけは当てると、続きは久美子が続けてくれた。
あ~煮物ね、煮物…って。
なんで切って焼くのもままならないレベルで煮物に手を出すかな。と思ったのはこの際置いておく。 しかも何が照れくさいのか、目の前から慎の背後に回って小動物よろしく肩口から覗き込んで「食べてみろ!」と促してきた。
いやマジで黒いんスけど。
しかし期待を裏切れない、要するに久美子にベタ惚れの慎には「食べる」以外の選択はないわけで。
覚悟を決めてひとつ口に放り込むと、お菓子以外で感じたことのない感触が口内で広がった。
ガリッ ボリッ ジャリッ
…煮物って歯ごたえあったんだ…。
「どうだっ!?」 「…かぼちゃの煎餅みてぇ」 「煮物だぞ?」 「だよな」
広がる苦味と甘味の混ざったなんとも言えない「多分食べ物?」をコーヒーで流し込んで振り向くと、ちょっとだけしょんぼりした久美子の顔。
「色的にはいけると思ったんだけどなあ…」 「…まぁ、色的には」
茶色の部分もあるにはあるしな…大分黒いけど。
それでもやっぱり久美子にベタ惚れの慎は、もう一つ口に放り込んで半ば無理矢理コーヒーで流し込んでから背後の久美子を腕の中に囲む。
「来年に期待」 「…おうっ!」
ニコッと笑顔を見せた久美子の頭をぽふんとひとつ撫でて、いとしい恋人が作った「自称かぼちゃの煮物」をきちんと完食するべく箸を持ち直した。
Fin
必須アイテム:胃薬 似せる気が全く無いという堕落っぷりです。 仕方が無い!役と中の人は別人ですからっ!(開き直った) 夜中に思いつきで突発的に書いたもんですから、改善の余地もありませんが…ハッピーハロウィーン!!
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