「…起きたわけ?」 「…ひゃ、ひゃわら…へっぐしゅん!!」
激しい雨降りの最中、何を思ったのか傘も差さずにずぶ濡れで現れた元担任、現彼女は、着いて早々風呂場に放り込んで暖めたのも無駄でしたとばかりに、数時間後には真っ赤な顔をしていた。
「大江戸には泊まらせるって電話しといたから」 「…ゲッホゲホ…ひゅ、ひゅまん…」 「しゃべんなくていいから、寝てろ」
常日頃の弾けっぷりはどこへやらで、すっかり弱々しくベッドに納まっている姿は風邪っぴきそのもの。
お前ホント何しに来たんだよ、と突っ込みたいところだけど、跳ね起きて反論しそうな性格を思えば、そんな病人相手に下手なことも言えず、寝てる間に買ってきた冷えピタを額にペタリと貼り付けてやる。
「ちべらい…」 「ん。…起きれそうになったら声掛けろ。お粥作ってっから」 「…たべりゅ」 「大丈夫か?」 「んう~…あつくれひゃぶい」
まだ熱が上がってるらしいヤンクミは、細かく浅い呼吸で節々も痛むらしかった。 起き上がろうとするのを背中にクッションを当ててやり手助けし、スプーンを差し出す。
「食えるか?」 「ふ…ふりゅえゆ…」 「くっ。めちゃくちゃ舌っ足らずなってんぞ…ほら、貸して」 「しゅまん…」
鼻が詰まってるのと熱とで常に薄く開いた口は、少し乾燥していて痛々しい。 スプーンも満足に持てなかった手からそれを取り上げて、熱い湯気を立てる粥を掬って息を吹きかけ、口元へ差し出すと腹はそれなりに減っているのか素直にパクリと口に含んだ。
「んまい」 「味がわかるんならまあ、まずまずだな」 「しゃわら~もっと~」 「はいはい」
催促されるまま冷まして、次々口に入れてやるとあっという間に器は空になり満足そうな溜め息をついてオレにニコッと笑顔を向ける。
「薬持ってくるから。それ飲んだらまた寝ろ」 「う~…しゃわらとはなしぇらい~…」 「治ったらいくらでも聞いてやるから」
こくんと頷いて、苦虫を噛み潰したような顔で薬を飲み横になったヤンクミはオレに手を握れと要求した後、やっぱり起きてるのは辛いんだろう。面白いほど早く夢の世界へ舞い戻って行った。
無理してでも、会いたがって来てくれるのは嬉しいけど、これじゃ本末転倒だ。
「早く治って、手ぇ出させろよな」
さっきよりは少し楽そうな呼吸になったヤンクミのおでこに、予約の印を落としておいた。
Fin
体調を崩された響子様に~…と思ったんですが、メールで送ってもきっとお読みになれないことに気付いて急遽UPしました(笑)。 早くよくなりますように!
|
|