「…お前、頼むから変なモンに登録するなよ」 「別に見てただけだよっ!」
久美子の手にあるのは、新しくしたばかりの携帯電話。 先日ちょっとひと暴れした際に…いや、ひと暴れした「後」に自分で踏んで壊した為、ちょうど古くなっていたからと、慎と一緒に機種変更してきたばかりのもの。
帰宅した後、自分の膝の間にちょこんと収まって操作を覚えようと必死に弄っていた久美子の指が止まり、見入っていた画面というのが…「初恋の人からメールが来る!」という宣伝文句のページだった。
そして冒頭に戻るわけだが。
ちょっと楽しそうに眺めていた様子が、慎はなんとなく気に入らない。 いくら現在恋人の座は自分以外有り得ないとはいえ…こうして密着した状態で他の男のことを考えられるなんて、面白いはずがないのだ。
大体慎は、実は結構なヤキモチ焼きなのだし。
「ホントかよ。お前の携帯に「篠原」とか言う架空の人物からメール来たら今度はオレが踏むぞ」 「何膨れてんのお前…かっわい~な~あ!」 「やめろ」
それを知っている筈の当の恋人は、ヤキモチを妬かれた事が喜ばしい…というより、普段クールで押し通している彼氏の妬いている姿が大変気に入ったようで頭をぐしゃぐしゃと掻き回し満面の笑みを浮かべている。
「うっふっふー♪沢田はヤキモチさんだもんな~♪」 「お前喧嘩売ってんのか…」 「まあまあまあまあ、安心したまえ明智くん!」 「怪盗二十面相か」 「…細かい所はよしとして」
自分で振っておきながら元ネタを知らなかったらしい久美子は、一転して微妙な顔で固まった後気を取り直して慎の膝の上に座りなおした。
「君がヤキモチを妬くことはないのだよ!何故なら…私の初恋は君なのだからね!」 「まだ続いてんの…はっ?」 「にゃははー!びっくりしてるな沢田!」 「いやっ…は?え?」
頬をうっすら染めて、それでも強気な態度を崩さずにいる久美子に聞きたいことは数あれど、言葉にならない。
「つまり、あたしの「初めて」は1から10まで全部沢田のモンってことだ」
18歳の自分ならまだしも。24歳の久美子が気持ちまで全て真っ白だったことに驚いたと同時にどうしようもない嬉しさが込み上げて、慎は思わずにやける口元を手で覆った。
「初恋は実らないって言うけど、きっと実ったら一番幸せってことだよな」 「…ですネ」
久美子が「恋」で思い出すのは、慎のことだけで、慎も「恋」で思い出すのは久美子のことだけ。
それで幸せにならないという方がおかしいのだ。
はにかんで笑う久美子をぎゅーっと抱きしめて、慎は実った初恋の幸せをしみじみ噛み締めた。
Fin
トイレの芳香剤…なんて思ってません!思ってませんよ!! アフリカ設定なしの卒業後ってことで。 たまに携帯でそういう広告を見て「色々考えるな~」と面白がってます。
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