コンコンコン コンコンコン
聞き慣れない小さなノック音で、慎は目を覚ました。
コンコンコン コンコンコン
控えめなそれは、チャイムを鳴らさずノックをする人物に覚えがないわけではなかったが、常の音量と違いすぎて確信がもてない。
それでも他にそんなことをする人物など思いつかない為、眠気でだるく感じる体を無理矢理動かしドアスコープから相手を確認する。
案の定、思いついた一人の人がそこには立っていて、鍵を開けると少し恥ずかしそうにはにかんだ久美子が「きちゃった…」と慎に笑顔を向けた。
「ごめん、寝てた…よな?」 「…お前、こんな時間に出歩くなよ」 「べっ別に遊んでたわけじゃねぇよ!」
ふぅん?と気の無いそぶりで部屋に入るよう促すも、ふるふると首を振って入ろうとしない。
「ちょっと顔見に寄っただけだから」 「…なんかあった?」 「ねーけど」 「じゃ、オレに会いたくなっちゃった?」 「………」
ふわり、赤らむ顔は肯定のしるし。
「そんなじゃねぇし…!」
唇を尖らせて俯き加減に拗ねる久美子に、抑えられず緩む頬を見られたくなくて慎が玄関に突っ立ったままの久美子を抱き寄せると、言葉だけは素直に「オレも会いたかったし」耳元で囁いた。
「…来ちゃ、ダメだって思ってたんだけど」 「ん…」 「お前勉強頑張ってるんだろうし、邪魔しちゃダメって…思ったんだけど」 「…うん」 「どうしても、会いたくて…寝れなくて」
寝汚いのはお互い様で、普段の久美子ならとっくに夢の中にいる時間。 甘えていても分別ある大人でもある久美子が、今この場所にいるのだから、よっぽど迷った末の行動だろう。
会いたくて耐え切れなくなるなんて、自分だけだと思ってたから。
ただ嬉しくてたまらない。
「…家は?」 「窓から、抜け出してきちゃった…」
確かに家人が起きていたなら、さすがにこの時間に一人で外出などさせるわけもない。
「あとどんくらい?」 「もう、ちょっとだけ…」
できればこのまま朝まで一緒にいたいけれど、まだそれは許されない、誰にも見られても知られてもいけない関係だから。
闇に紛れていられる内に、胸へ擦り寄りシャツの背中を握る久美子を、「もう、ちょっとだけ」抱きしめた。
Fin
夜這いにしようか最後まで迷いました…(どんな迷い方だ)。
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