「急になんか変われない!」
そういった私を、あいつは「だろーな」の一言で終わらせた。 別に怒って欲しかったワケじゃないし、ガッカリさせたかったワケでもない。 でも、そんな一言で終わらせられるような、簡単なことだと思われてることが気に食わなくて。
街を歩けば、仲睦まじく手を繋いで笑い合うカップルがそこかしこを歩いてる。
楽しそうな雰囲気は一目見てデートだと分かるほどで、満面の笑顔を惜しげもなく彼氏に向ける彼女の姿は、同性の私から見ても可愛らしいものだ。
「…「カップル」って、ああいうのを言うんだよな…」
あんな風になれたらいいのに。
内心では羨んでるのに、表面上では気にしないフリをして、挙句の果てに勝手に爆発させてりゃ世話無い…本当、我ながら面倒くさい女。
変わるのが嫌なわけじゃない、けど。 変わるのは正直、恐い。
手を繋ぐのだって嫌じゃないし、隣にあいつがいるのは何より心が浮き立つ。 無愛想なあいつの滅多に見れない可愛い笑顔を見れた日には、一週間はそれで幸せモードON状態で頑張れる。
そういうことを正直に言えばいいんだって頭では分かってるんだけど、どうにもこうにも…あと一歩を踏み出す何かが足りなくて。
「どーしたもんかねぇ~…」 「何が?」 「いや、カップルらしくするのがよぉ…ぉおおおお!!?」 「…なるほどね」 「なんでお前がここに!」 「オレん家の前で何言っちゃってんの?」 「は?ここ…お前ん家じゃん!!」 「…お前、大丈夫?」
考え事しながら歩いていたら、いつもの癖っちゅーか体が覚えてるっちゅーか、無意識に沢田のアパートまで来ていた。 いきなり背後から思考の中心人物の声が聞こえたもんだから、てっきり偶然鉢合わせたと思ったのに…習慣って恐ろしい。
「…別にいいと思うけど」 「はっ?」 「だってお前、想像してみろよ。手ぇ繋ぐ…のはいいけど、往来であーやってキャッキャウフフしてるオレ等の姿」
言われて想像してみて…血の気が引いた。
「ありえねぇ…!!」 「だろ?」
すげー勢いでありえねぇ。 つーか鳥肌立っちまったよ。きっしょい!
「だから別にオレとしては、特に変わって欲しいわけじゃねーんだけど」 「…あぁ」
別に「簡単に考えてた」わけじゃなくて、「簡単なこと」だったってことか。 もやもやと視界と思考を覆ってた霧がすっぱり晴れて、らしくねぇことで悩んでた自分がばっかみてぇで笑いが込み上げてくる。
「何笑ってんの」 「んーや、なんでもねぇ!」
可愛くなれなんて沢田は一言も言ってないんだから、全然プレッシャーなんて感じる必要なかったのに、何をあんなに申し訳なく感じていたのやら。 ゲタゲタ笑い続ける私に、多分色々とお見通しだったに違いない苦笑いを零した沢田が
「かわいくねーお前が可愛く見えてんだから、そのまんまでいろよ」
などと男前な口説き文句を吐いたお陰で、笑いが引っ込んだ挙句照れで肌どころか視界まで真っ赤に染まった私が居た。
Fin
慎ちゃんは久美子さんならなんでもいいんです、きっと。いや絶対か(笑)。
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