「なんでや…!」 「ホントですよ。なんででしょう?」 「さ、さぁ…?」
白金学院、保健室。 巷ではなかなかに有名な不良高校の中の、女3人が一堂に会していた。 女3人寄ればかしましいとはよく言ったもので、暇さえあればここに集まってどうでもいい話に華を咲かせているのだが、いつもの楽しげな雰囲気は今は鳴りを潜め、綺麗に整えられた眉を顰めて何やら唸っている2人と、なんだかわからないけど一応同意している1人。 言わずと知れた藤山静香、川嶋菊乃…と山口久美子である。
そして女同士といえば、当然華が咲くのは恋愛話。
槍玉に挙げられているのは、パッと見一番縁遠そうな久美子だった。
「そんな何も知りませ~んみたいな顔して、ちゃっかり生徒捕まえてるしぃ~」 「つっ…捕まえるってそんな!」 「あぁそやな、捕 ま っ た んやもんなぁ?」 「や、あの…っ!」 「教師と生徒の禁断の恋…燃えるわー!」 「し、沢田は元!生徒ですっ」
慌てて訂正する久美子の言葉に、ニヤリと2人が悪い笑いを浮かべる。
「べっつに~「し・ん」って呼んでもええんやでぇ?」 「そうですよぉ~い・つ・も・ど・お・り♪」 「さっ…沢田は沢田ですっ!」
彼氏がいようといまいと、いつまで経っても恋愛に奥手な久美子がオロオロする姿が2人にとってはとっても楽しいお茶請けになってることは未だ本人はわかっていない。 しかも、本人ばかりか自分の恋人である慎までお茶請けにされていることには、あまり頭が回っていない。
「で?どうなん沢田って」 「雰囲気からすると上手そうだけど…やっぱり若いですしね~質より量?」 「は?」 「「夜のお勤めぇ~♪」」 「ん、んなっ!!!」
この上なく楽しそうに振られた大人な話題に、メガネの奥の大きな目を見開いて固まった。
「…まさか、まだとか言いませんよね?」 「付き合って…2年やろ?」 「ま、ま、まだじゃないですっ!昨日も…ハッ!!」
ついポロリと口が滑って、咄嗟に両手で塞いでももちろん後の祭り。 キラッキラに目を輝かせた大人の女性2人が、「その顔合コンでしてみて下さいよ!」と言いたくなるほど鼻の穴も鼻息までも全開にして詰め寄られる。
「あ、あの…えっとぉ~…」 「で?で?で?質より量なん!?」 「そんなことありませんっ!」 「きゃー!量も質もバッチリぃ~!?」 「い…言えませんそんなことっ!」
「質より量」だけを否定して、他を否定しなければそうだと肯定しているようなものなのに、それに気付かない久美子はもう何も言うまいとキッと2人を睨んで口をしっかりと引き結んでいた。 元より頑固な面がある久美子は、こうなると梃子でも話さないのだが。
そこはそれ、2人が密かに「魔女」と呼ばれる所以。
「山口センセ…あたし達心配なだけなんですよ?」 「そうや。アンタん家は男所帯やし、こういうことで相談する友達ってうちらやろ?」 「し…心配?」 「スル時、沢田くんどんなことします?」 「え?え?」 「ヘンな体勢取らされたりとかせんの?」 「そ、そういえばこの前…」 「「うんうん、全部言っちゃって!」」
まんまと乗せられて白状させられてるのにも気付かず、次々と自分達の「夜の事情」を事細かに報告してくる久美子に、魔女2人は「若いっていいな~」と半ば悔しくなりつつ、このネタでいつどうやって可愛いカップルをからかってやろうか、内心ほくそえんでいた。
Fin
久美子さん、魔女に操られるの巻き。 この上なく意味がありません。慎ちゃんガンバレ…!
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