恋する貴方へ贈る百の花
070  薔薇(桃)/君のみが知る
 無愛想
 毒舌
 意地悪
 頭脳明晰
 容姿端麗
 仲間想い
 妹想い
 意外と熱血
 漢気がある

 恋愛事に興味なし


 誰かに沢田のことを聞かれたら、教えるのはこんな感じ。
 元生徒の誰もが知ってること。

 他には?って聞かれたら…知っているけど教えない。

「何やってンのヤンクミ」
「んー沢田レポート」
「…は?」

 大江戸の居間で縁側に座り、何をするでもなく…それこそ生徒の時と変わらず文庫本を読みふけってた沢田が、ちゃぶ台から一向に顔を上げないあたしを不思議に思ったのか、本に視線を落としたまま聞いてきたので正直に教えると、一瞬止まった後視線がこっちに向いた。

「だから沢田レポートだ」
「…何の為のレポートだよ」
「沢田の人物像について!…この前うちに押し掛けてきて矢吹が是非に、って」
「…あいつか」

 深い溜め息をついて諦めたようにパッタリ倒れる。

「矢吹は沢田大好きっ子だからなぁ~」
「お前それ渡してもいいけど、コピー禁止って矢吹に言っとけよ」
「渡すのはいいんだ!」
「チェックは入れる」

 寝るつもりなのか倒れたまま目を閉じて、添削を要求されたけど…あーまつげなっがいなあ…いつまでたってもお綺麗な顔しやがって。

「ヤンクミこそ寛大じゃん」
「…へ?」
「去年まであいつらにオレの情報渡すとか、そんなこと絶対しなかったろ」
「…まあ。これくらいはな」

 片頬あげる笑い顔は、多分色々見抜かれてんだろうなーという表情で、なんだか癪に障ってそれ以上答えるのをやめた。

 自分の世代が違う生徒達が仲良く交流を持ってくれるのは嬉しい。
 元担任としては誰彼構わず自慢したくなる位喜ばしいことなんだけど、沢田に関しては…なんというか、微妙な気持ちが拭えないのが正直な所。

「…お前が書くか、これを」
「え、わあ!覗くなよえっち!」
「アホか。ここ消せ」
「…なんでだよ。合ってるだろ?」

 いつの間にか背後に寄って来て肩に顎を乗せた沢田が指を指したのは「恋愛事に興味なし」の文字列。
 不満気にあたしの書いた文字を長い指でトントン、と突付いて「興味ないわけねぇだろ」と言う。

「だってお前全っ然女の影なかったじゃん」
「…いつの話だ」
「…今も?」
「…バカじゃね?」

 心底呆れた声に怒ろうとした瞬間、肩に乗ってた沢田の顔がひょいっと前に出てきてちょうど振り向いたあたしの唇にちょんっとちっちゃいキスを落とされた。

「んにゃっ!?」
「隙あり。ペン貸せ」
「おい、ちょっと…!」

 両手で口元を覆うのに放り投げたペンを拾って、目の前の紙に一言、書き足す。

「ま、お前が知ってればいいんだけど」
「…じゃあ書くんじゃねぇよ」
「どこに流れるかわかんねぇからな」

 牽制ですよ、センセー。
 そう言ってもう一度、お色気満点の顔に似合わない可愛いキス。

 沢田レポート完成版。

 無愛想
 毒舌
 意地悪
 頭脳明晰
 容姿端麗
 仲間想い
 妹想い
 意外と熱血
 漢気がある

 恋愛事に興味なし(山口久美子は除く)



Fin

どこまでもあの「軽いキスをいっぱいするのが好き」発言が頭から離れない~!
お題では久しぶり(?)のいちゃこらです。