恋する貴方へ贈る百の花
072 苧環(白)/あの人が気がかり
「よ」
「慎!いらっしゃい!」

 暖簾をくぐって片手を挙げ、見慣れた男としても見惚れる程整った顔立ちの幼馴染みが来た。
 白金を卒業してから1年。

 皆それぞれ仕事や勉強にと忙しく、
各々近況報告に店に来てくれたりはするけど毎日つるんでた仲間とも今はそんなに会えてない。
 その中でも、慎と店へ来るのは卒業後これで5回目…と少ない方だ。

「慎ちゃん大学どう?」
「ぼちぼち、だな。講義は結構面白ぇ」

 元々勉強のできる奴だからこそ楽しめるんだろうけど、相変わらずのポーカーフェイスも嬉しくてつい笑顔が浮かぶ。

「なあ、慎…ヤンクミとさ、会ってる?」
「うん?…あぁ、まあな」

 注文されたラーメンを出して聞くと、曖昧な返事が返ってきた。
  この何でも出来るようで不器用な親友は、高校時代からやたら男前な担任の女教師に惚れていて…ヤンクミだって慎ちゃんにいっぱい頼ってたり、いつでも2人 はセット商品みたいに一緒にいたのに。卒業以来、2人で店に現れないことを密かにオレも、仲間もどうなっているのかと心配してた。

 ラーメンを啜ってもカッコイイ慎が特にいつもと変わることなく食べ続けていると、ピピピピピッという電子音が店内に響く。

「…はぁ」

 慎が携帯を出し相手を確認して、溜め息をつき通話ボタンを押すと。
 忘れもしない元気のいい声…というより怒鳴り声が電話の向こうから響いてきた。
 予想してたらしい慎は耳元から離して冷静に携帯を眺めている。

『てんっめぇー!慎っ!!今どこだぁ!!』
「うるせーよ静かに話せ馬鹿」
『なんで家で待ってねぇんだよ!』
「…お前さ、メールくらいちゃんと見ろよ」
『は!?』
「クマの店に行ってから帰るってメールした」
『…あ、そういえば読んだ…』
「全身洗って待ってろ」
『く、首洗っての間違いだろ!!』
「いーや。全身洗って待ってろ。じゃあな」

 パタン、と携帯を閉じてまたラーメンを食べ始める姿に何も言えず見ていると、視線に気付いた慎が顔を上げて、

「つーワケでこれから会うから」

 とカッコイイ笑顔で宣言した。

 いつの間にやらオレの親友と元担任は、オレ達仲間が望んだ通りの関係になっていたらしい。

 そうだよな。
 慎とヤンクミがもっと仲良くなれば、なんて無駄な心配だったんだ。

 だって慎はヤンクミが大好きで、ヤンクミは慎が大好きなんだから。

「おめでと慎ちゃん」
「…今度は2人で来るよ」

 照れたように返してきた返事に、オレは嬉しい気持ちのまま頷いた。



Fin

クマの気がかりといえば、慎ちゃんしかいないですよねー!
珍しくアフリカ設定は無視の方向で。
いつの間にか、知らない間にくっついてて教えられてなかったとしても喜ぶクマ…健気や…!