「ゼータクだよなあ」 「ゼータク過ぎる」 「とんでもねーゼータクだ」 「慎ちゃん…」
一昨日、昨日と続いた雨はすっかり上がった気持ちの良い朝。 まだところどころに見える水溜りが光を反射するのに目を細めながら白金3Dの悪ガキ代表5人組…の内、4人が少し前を歩く2人の背中を見て知った風にうんうんと頷く。 最後になんだか違うことを呟くのは内山だ。
で、頷かれている前の2人の様子がいつもと違うのかと聞かれればそういうわけでもなく至っていつも通りではある。
「ちょっとだけだって」 「…断る」 「そんなこと言うなよ~沢田ぁ~」 「ダメ、行かない」
何を言い合っているかといえば、今日学校が引けた後久美子の服を見立てに付き合うか付き合わないかという話で、以前慎に見立ててもらった服で合コンに行った時篠原に褒められて美味しい思いをした久美子としては、是非ともまたお願いしたいのだが、慎は断固拒否の一点張り。 自分が見立てるとはいえ、そのお目当ては篠原であって…慎としてはライバルの目を楽しませる為に、惚れた女を着飾らせるなんて真っ平ゴメン、というわけである。 当たり前だ。
生来現実的というか…楽観的でも悲観的でもない性格ではあるが、これだけ一緒に居て男と認識してもらえないばかりか、ライバルとの恋路を応援させられそうになっている事実は結構な鋭さで慎の気持ちを抉る。
久美子に笑っていて欲しいのはもちろん大前提だけど…慎には中々にキツイものだった。
「なー沢田ぁ…お願いっ」 「…………」
多分無意識だとは思うが、好きな女に上目遣いで小首を傾げて見つめられてお願いされたら、大抵の男は断れないんじゃないかと慎は思う。
…というか、慎は断れなかった。
「あーはしゃいじゃってるよ」 「慎弱いっ!弱いよ!!」 「天下の硬派も惚れた女には弱かったのね…」 「残酷だなー…ヤンクミ」
後姿にひっそり哀愁を漂わせてる慎の横では、スキップせんばかりに浮かれている久美子。
対照的な2人の様子に4人が漏らすのは苦笑いだけだ。
「にしたって、意外に魔性の女だよな」 「あんっなに大事にされてるくせにさー」 「篠原篠原言ってっけど、頼るのは慎の癖に」 「ヤンクミなんか慎にフラれればいいんだっ!」 「「「いやー…」」」
物凄く面白くなさそうに吐き捨てた内山のセリフに、3人が3人共内心で「慎がフるとか有り得ない…」と思ったのは置いといて、なんだかんだ言いつつ4人は自分達の愛すべきリーダーの一途な想いが叶う事を心から願っているのだけど…いつになったらあの鈍感で幸せな担任は自覚するのやら。
にしても。
「他の男と一緒に居る方が幸せそうなんだから、篠原も気の毒だよな…」 「「「それは言えてる…」」」
外側からの方が、意外とモノがよく見えるわけだ。
Fin
何にも考えずに慎ちゃんを振り回し、篠原さんを重要視してるようでいて慎ちゃんの意見が絶対という久美子さんの幸せな日常。
やっやっこっしっい…っ!
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