恋する貴方へ贈る百の花
093 ネリネ/また逢う日を楽しみに
 日曜日、今日はデートの約束もなく一人ブラブラとウィンドウショッピングを楽しんでいた。
 この所毎週の休みに誰かと出かけてばかりで、少し疲れてしまった所もあったから…久しぶりの一人の休みは退屈するかと思ったけど、思いの外気楽で良い感じ。

 いつも2人でばかりだからされることもなかったナンパもされる。

 …って言っても、ロクな男がいないのよねぇ…勘違いしてるのばっかっていうか。

 そんな「他の女に安く見られる様な」ナンパには、当然ついて行く気もなく適当に受け流して買い物を続けた。

「は~…こんなに歩いたの久っしぶりぃ~…」

 普段は履かないジーンズに、化粧も少しナチュラルにしている今日の私はなんだか少し開放感に包まれて、これまた普段は行かないファーストフードに入って頬張るハンバーガーが疲れの所為か記憶にあるよりも美味しく感じる。
 色々な店を回り、歩きまくった足は既にだるくなる程で、明日…悲しいかな明後日かしら?多分筋肉痛になるだろう。

 男の人と出かけるのはもちろん好き。
 自分を磨くのは楽しいし、女として扱われるのも、好き。

 だけど本当にたまーに、気詰まりを感じる時もある。

 綺麗な化粧をして、綺麗な服を着て、綺麗に歩く。それ以外の私を求めてくれる人なんているのかしら、って思う時が。


「あ…」

 癖でリップの取れ具合を気にしていた視線の先、人ごみの中に見知った姿を見つけた。

 今日のあたしと同じ様なジーンズにミニ丈のパーカーで飾らない姿の彼女と、Vネックの白いカットソーに黒いカーディガンを羽織り、ブラックジーンズを履いた彼は誂えた様によく似合ってる。

「帰って来てたんだ…」

 彼は卒業後すぐに遠いアフリカへと旅立っていたから、見るのは卒業式以来だ。

 会わない数年の間に、残っていた少年っぽさは鳴りを潜めてすっかり「男」にしか見えなく、元々の落ち着いた雰囲気は更に磨きが掛かって、隣の彼女との年齢さを感じさせなくなっている。

 2人は何を話しているのか、しきりにお互いを見て楽しそうに笑っていた。

「無愛想が嘘みたいね」

 クスリ、と思わず出た笑いは嬉しさも相俟って怪しまれる程顔に出てしまう。
 変わらず仲の良い姿は、彼女と同じ学校に勤めていた思い出を輝かせて…少しだけ寂しい気持ちになる…戻りたいとは思わないけど、あんなに楽しい教師生活はきっともう送れないから。

「え…あぁっ!?」

 ちょっとしんみりと感傷的な気持ちになっていた私の目に飛び込んできたのは、人ごみから抜け出した2人の…しっかりと、繋がれた手。

 もう、周囲の席からの視線なんて気にしてられない位、大口を開けて驚いた私は大急ぎで携帯を取り出し、あの学校にいた時から彼女と一緒に飲みにいったりしているもう一人の「先輩」にメールを打つ。

 1人で楽しいけど、ちょっと退屈だった日曜日。

 仲睦まじく歩く元教師と元生徒、今は普通の恋人同士になったらしい2人のお陰で一気にすごーく楽しいものに変わった。

「報告ナシってのは、だめよ。山口センセ♪」

 月に一度の女3人の定例会。
 きっちり聞かせてもらおうじゃないの!



Fin

そして定例会で慎ちゃんとのことを根掘り葉掘り聞かれて右往左往する久美子さん。
川藤コンビに弄られまくる久美子さん…大好きです!(Sッ気全開)