恋する貴方へ贈る百の花
098  クローバー(四葉)/私のものになって
「本日はあ~!?」
「「「合コン♪合コン♪」」」
「おっ相手はあ~!?」
「「「桃女っ!桃女っ!!」」」

「わかったからお前ら席につけ!!」

 朝っぱらから高めだった3Dの奴らのテンションは留まる所を知らず、放課後まで後1歩のSHRにはワケの分からない掛け合いが飛び出す始末だった。
 といっても全員が高いわけじゃなくて、合コンメンバーに選ばれたヤツだけがハイになってるらしいけど。

「ヤンクミ~さっさと終わらしてよん!」
「そーそ、今日はオレ達のクリスマスが心温まるものになるかが掛かってんだから!!」
「桃女とお付き合いしちゃう~!?」
「「「しちゃうぅ~ん!!」」」

「だから静かにしろっつってんだよ!」

 ドスをきかせて有無を言わさず黙らせた後で大人しくなった生徒に連絡事項を伝えて、最後に沢田に残るよう言うと物凄い勢いで合コン野郎共からブーイングが噴出する。

「ダメだって!慎はビジュアル担当なんだから!!」
「つーか慎が来るって言ってセッティングしてんだよぉ!」
「「「「お願い、慎は連れてかないでぇ!」」」」
「…オレ行くって言ってねぇし」

 最後の慎の一言で久美子に軍配が上がり、本日白金学院3Dの合コン失敗が決定した。
 肩を落として合コン会場へ向かった生徒達を見送り、当初の予定通り慎と久美子は数学準備室で資料を整理する作業をしていたが、不意に手を止めては溜め息をつく久美子の様子に慎は首を傾げる。

「ヤンクミ、調子悪い?」
「んー?いや、そんなことないぞ」
「…辛かったら少し休んどけよ」
「うん…なー沢田あ」
「何?」
「結婚しようかぁ」
「…は?」

 突拍子も無いことを言い出すのは久美子の常だけども、いつもかろうじて(あくまでもかろうじて)常識から外れないレベルのことしか言わないのに、流石に今回ばかりは慎も驚いた。

「結婚したら合コン行かないだろ?」
「…それは、結婚したらお前も合コンいかねぇってこと?」
「え?行かないよ当たり前じゃん」
「ふーん…」
「うんうん」
「じゃあするか」
「うん…へっ!?」

 まさかそう返されるとは思わなかった久美子は、目をまん丸にして慎を見返した。
 対する慎は、結構真面目な面持ちで見つめている。

「冗談だった?」
「…ちょっと、本気だった」
「オレも結構本気なんだけど」

 幸い誕生日は過ぎて、世間的にはともかく、法的には許される18歳になっている。
 久美子に至っては言わずもがなだし。

 しばらく見つめ合った後、どちらからともなく笑みが漏れて、止まっていた手を動かし始めた。

「じゃあ挨拶行かなきゃなー」
「お前ん家が先」
「なんで!」
「嫁さんの家に先行くのが常識じゃねぇの?」
「嫁さん…」
「嫁さん」
「ヤッバイ、すーげぇ楽しくなってきたかも!」
「かもかよ」
「沢田ー幸せになろうな!」
「当然」

 今はまだ言葉遊びだというのはお互いにわかってて、きっと数年先には本当になるだろうから、その時まで。

 大声で自分のだと言える時まで、言葉だけでも。



Fin

在学中秘密なお付き合い。
きっとこのお題の2人はプロポーズしまくった上、結婚した後も記念日ごとにプロポーズとかしてそう。