ウチの担任は、他とちょっと毛色が違う。 男子校の紅3点の内の1人…と言えば聞こえはいいけど、隣のクラスの静香ちゃんはモデル並みのプロポーションと美貌だし、保険医の川嶋は結婚してただけあってそれなりな容姿。
…に比べてウチの担任ときたら、年がら年中メガネにおさげでその上ジャージ。
そりゃあね? いいヤツですよ。 女の癖に男気溢れるっつーか、それまでオレ等が溜めに溜め込んだ大人への不信感なんかフッ飛ばしちまう位、真正面から信じてくれる。
ちょっとばかし暑苦しいのが玉に瑕だけどさー。
で、そんな担任のヤンクミはオレ等5人とよくつるんで放課後とかも遊んだりしちゃってるけど、リーダーの慎とは、それはそれはまあ…「仲が良い」わけで。
「てめぇなんでまた居るんだよ」 「居ちゃ悪ぃかよ!」 「悪くなかったら聞かねぇよ。バカじゃねぇ?」 「てめぇ!それが恩師に対する態度か沢田!!」 「帰れ」 「いっやっだねっ!てめぇに言われて「はいそーですか」って帰るかよ」 「…うっぜぇ…」
えぇ、もうそりゃあ犬と猿のように「仲が良い」んです。 元々慎は大人全般を嫌ってて、その対応の仕方も半端ねぇキツさだってのに、それでも喰い付けるヤンクミってやっぱすげぇと思う。 心底うざそうに視線も合わせない慎ちゃんと、ちっちぇー体でピョンピョン跳ねながら慎に怒ってる姿はまるで
「親犬に「遊べ」って飛びついてる子犬っぽいよなぁ」 「あ、うっちーうまい」 「キャンキャン言ってるしな」 「親犬全然相手してねぇけど」 「お前ぇら聞こえてんぞ!!」 「「「「ごめんごめーん」」」」 「…マジうぜぇ」
最初はハラハラもしたけど、慎は絶対女に…例えバケモンみたいに強いヤンクミでも、手はあげずに舌戦のみだし。 …ヤンクミの方は、たまにあげてるけど。 この目の前で繰り広げられる攻防戦にも慣れたオレ等は傍観と茶々入れするのを楽しんでた。
そんなにデカイ声で話してたわけでもないのに聞こえたらしい地獄耳のヤンクミが目を吊り上げたままこっちを振り向いて怒るから形だけ謝ると、同じく聞こえてたらしい慎が深ーい溜め息をついてくるりと方向転換する。
「あれ、慎?」 「帰る」 「えー!!これからナンパ行こうと思ってンのにぃー!」 「パス。興味ねぇ」 「てっめぇ、逃げんのか沢田!」 「ほら、ヤンクミも帰って欲しくないって」 「言ってねぇえええ!!」 「言ってねぇってよ。じゃあな」 「「「「慎ちゃあ~ん!」」」」
後ろ手に軽く手を振って本当に帰って行っちゃった慎に、今日のナンパはきっと収穫なしというのを予感して、行き先変更でゲーセンに向かったんだけども、さっきまでケンカしまくってたヤンクミは口では「あー清々するっ!」と言いつつ、さっきより更に不機嫌になった。
しかも軸を失ったようにあっちへチョロチョロこっちへチョロチョロ動き回り、いつ迷子になるかと気が気じゃない。
「慎ちゃんいないとヤンクミ見てんの大変なんだよな…」 「慎がいたらそこから動かないからね」 「寄ると触ると言い合いの癖に」 「近頃慎裏返したらヤンクミひっついてそうな気がするよ、オレ」 「「「言えてる!」」」 「お前ぇら何やってんだ、さっさと来い!」 「「「「ハイハイ」」」」 「お返事は一回だっ!」
しかもいない時の方が機嫌悪いってどういうことなんだよ。
「慎だって文句言いながら絶対本気で追い払ってねーし」 「一緒にいるんなら仲良くすりゃあいいのにな~」 「ホントだよ」
急かされても急がないオレ等を、プリプリ怒って呼びつけるヤンクミの元へ向かいながら、いつまで2人に振り回されるんだろう、と4人で顔を見合わせて溜め息をついた。
Fin
お題サイト<Odds And Ends>様より拝借。 犬猿の仲な慎久美(笑)。
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