無自覚な恋の仕草
<例えばで始まる無限夢想>
 彼氏いない歴=年齢を悲しいかな貫き続けてるわけだけども、やっぱそこはあたしも乙女だから色々まだ見ぬ彼氏とのアレコレを夢見ちゃったりするんだけど。

 例えば。

 あくまでも例えば、今隣を歩いているこいつがもしもしもしもし万が一億が一彼氏だったとしたら、どんな感じなんだろう?ととんでもないことを思いついてしまった。

「なあ沢田」
「何」
「お前さーもしあたしが彼女だったらどうする?」
「…どうもしねぇな」
「想像力ってもんを働かせろバカタレ!」
「いや、想像するだけ無駄だろ」
「…失礼にも程があんぞお前…」
「その前にお前のその妄想が失礼なんだよ。そんなことばっか妄想してるから彼氏ができねぇんだろうが」

 隣のサワダくんは、あたしの可愛い乙女な想像を血も涙もなく打ち砕いてくださった。
 いつもロクに話もしない癖に、こういう時だけベラベラしゃべりやがって…
ちょっとくらい付き合ってくれたっていいじゃないか、なんて乙女想像のし甲斐がないやつだ!

「はっはぁ~ん、どうせあれだろ。お前もお嬢さんとお付き合いなんぞしたことがないから聞かれても困るってか」
「………はぁ…」
「図星か?図星だろやーいやーい!悔しかったら彼女の一人も捕まえてみろってんだ!」
「アホかお前…」

 ため息一つと、冷ややかな視線を向けられたって「いつものことだから怖くないもんネー」とか思ってまた自分の想像の世界を繰り広げようと思ったら、唐突に片手が何かに包まれた。

「へっ?」

 見ると、しっかりと指を絡めて繋がれた自分の手と、沢田の手。
 これは巷で有名な

「こっ恋人つなぎじゃねーか!!!」
「お前うるせぇよ」
「………はっ…恥ずかしい……」
「我慢しろ。現実と妄想は違う」

 沢田の手はなんとなく想像だとひんやりしたイメージだったんだけど、繋いでる手の平は熱くて意外だった。
 触れ合ってるのは手だけなのに、なんだか全身がほわほわと温く熱を持ったような感覚がする。

 いいなあコレ。
 毎日繋げたらいいのになあ。

「さわだぁー」
「ん?」
「明日も繋ぎたい、手」
「残業なかったらな」
「つーか、一緒に帰る時は繋ぎたい」
「どーぞお好きに」

 繋いだ手を緩く前後に振ってみても、沢田は嫌がるでもなくなすがまま。
 ふっふっふっ。結局沢田は優しいんだー、知ってるけど!

 これからはなるべく残業しないように頑張ろう。

Fin

付き合ってない、ちょっとだけ他より特別な関係の時の淡いときめきって大好きです。
なんだか無性に「むふふ」と笑いたくなるようなあの心境(笑)。

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