無自覚な恋の仕草
<接触時には深呼吸>
 3時間目の空き時間、ちょっくら昼寝でもいたそうと屋上へ向かう。
 昨日志麻姐さんに午前4時まで感動しまくってた所為で、ほとんど寝れなかったから職員会議は遅刻して怪獣・教頭ギョロメに嫌味ビーム喰らうわHRであくび出まくって生徒にガンガン突っ込まれるわで散々だった。

 もちろん志麻姐さんの所為じゃないけどね!
 自業自得なんだけどね!

 2時間目まではなんとか乗り切ったけど、4時間目も…午後も授業があるし、このままじゃ立ったまま寝そうだからとにかく不足分の睡眠をちょっとでも補給しないと。と思っていざ屋上に辿り着いて見れば。

「てめーら…いい度胸してんじゃねぇか…」
「「「「げっ」」」」

 可愛い教え子達が、堂々と法律違反してやがった。

「たあ~ばあ~こお~はあ~なああ~~~~百害あって一利ぬぁしなんだよ!!何回言わせりゃ気が済むんだこのバカども、没収!!!」
「そりゃねーよヤンクミ!」
「コーコーセーのなけなしの小遣いから買ってんのにぃ!」
「タバコ取られたら食費が嵩んじゃうよぉ!」
「今回だけは見逃してくれぇ~!」

 次々奪い取ったタバコの箱を恨めしそうに4人が見てるけど、知ったことか!

「うるせぇ!こちとら眠いんだよっ!!」
「「「「あぁああ~~~!!」」」」

 叫びながら4つとも握りつぶしてやると、まるでこの世の終わりみたいに全員崩れ落ちた。
 全く、吸わなくて死ぬようなもんじゃねぇのに大げさったらない。

 崩れ落ちる姿が、1人足りない…っつってもあいつはこんな風に崩れ落ちることなんてないだろうけど。
 そのちょっとした探し人は、いつものベンチで長い手足を放り出して目を閉じていた。

 いつもながら寝てんのか寝てないのかわかんないヤツ。

 にしても、あたしの眠気もかなり限界に来ていて…脳みそがふわふわした感覚を感じながらベンチに寝ている沢田に声をかけた。
 珍しく残暑がきつくない今日の日差しはほんのりと全身をポカポカに包んで、しかも目の前には気持ち良さそうにい目を閉じる沢田の姿を見ながら、さらに眠気が倍増する。

「さわだ…ねむい…」

 返事がない。ただの沢田のようだ。
 …じゃなくて、今日に限ってホントに寝てんのかこいつ!

「さわだぁ~眠いよぅ~」

 お前は授業の時間なんだからベンチを譲れ!と重い瞼を堪えながら沢田を揺すったら、投げ出されていた右腕が揺するあたしの手を掴んで引いた。

 あぁ、寝ていいってことかぁ…。

 思考がぼんやりしてきてたこともあって、クイクイと腕をひかれるままに沢田の上に倒れこむと沢田が身体をずらしてスペースを空け、あたしの身体がスッポリと沢田の腕の中にハマった。
 陽光をたくさん浴びた沢田の学ランはいつもの香水の香りと太陽の匂いがほどよく混じって心地よい。

 もっと堪能したくて、胸一杯に沢田の香りを吸い込んでゆっくりと吐き出す。

 半ば眠りに落ちながらゆうるりとした深呼吸を繰り返すあたしの頭上で、それまで規則的な寝息だけを繰り返してた沢田もゆるやかな深呼吸をしたのがわかった。

「いいにおい…」
「…うん…」


 おぉ、返事まで返って来た。

 沢田も自分の香りが気に入ってるんだな~と思いながら、頭の片隅で「あたしが沢田の『いいにおい』だったらいいのになあ…」って考えが掠めたのは、なんでだろう?

Fin

接触どころではない、という話。
もっと「そーっと触れて、キャッ☆」みたいな話を書こうと思っていたんですが、勢いが止まりませんでした…。
コメントありがとうございます!
お返事がうまく書けずに滞りまくりですが…心底うれしく拝見しております。
どれくらい心底嬉しいかというと、コメント読んでる最中のナガムラを見て旦那が「なんでニヤニヤしてんのー!こわいよー!!」と言うくらい心底嬉しいです。


<おまけ>

 小動物のようにひっついたまま、狭いベンチで気持ちよさげにスヤスヤと眠る自分たちの担任と親友の姿を遠目に眺めながら、先程久美子に「なけなしの」タバコを没収・破壊された4人は憮然と…ちょっとだけ赤面して渋~い顔を寄せ合っていた。
「なんなのあの人達…」
「くっついてますよねー」
「つーかあれ、慎ちゃん無意識だったよね、ヤンクミ引っ張り込んだの」
「やだっ!慎ちゃんスケコマシ!?」
「「「いや、あれはヤンクミ限定だろ」」」

 しかもいくら眠かったとはいえ、教え子をイロにしねえ!と言い張ってる担任が、教え子の腕の中に全く抵抗なしで納まって眠るっていうのは一体いかがなものか。
 片方が起きればいいものの…全く起きる気配がない上に熟睡してそうということは、よっぽどあの狭い空間が寝心地抜群…なわけがない!

「「「「もーいーじゃん、付き合っちゃえば!」」」」
 当てられることに疲れ切った4人は、無意識でお互いを必要としてる2人が早い所納まるべき形に納まるように願うばかりだった。

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