天然バカップル
「沢田って写真キライなのか?」

 いつもの昼休みにいつものメンバー6人でいつも通り昼食を食べて、いつも通りおしゃべりなど…といっても慎は参加してるようなしてないようなだが、していると不意に久美子が自分の携帯を眺めながら誰にともなく問うてきた。

「慎は昔っから写真好きじゃないよ」
あんパンを食べながら答えたのはクマ。

「そういやプリクラとかも一緒に撮ったことねーなあ」
「いっつも逃げるもんな」
「プリクラの一枚もあればナンパもうまくいきそうなのにぃ~!」
 ふざけながら続いて答えた内山、野田、南と、自分の隣でコロリと寝転がって無言を貫いている本人を交互に見やり、不意に久美子は携帯のカメラ機能を起動して慎に向けた。

「さーわだっち♪」
「…なにしてんの」
 楽しげな声で呼ばれ薄目を開けると、慎に向けて満面の笑顔で携帯カメラを向ける久美子がいて思わずため息を漏らした。

「写真撮らせろ」
「いやだね」
「いいじゃん、大丈夫!3人の真ん中とかじゃないから魂とられたりしねぇって!」
「やめろ」
 拒否の即答にもめげることなくレンズを向けてくる久美子に背を向ける形で寝返りを打ち、拒否の意思を示す。

「諦めろってヤンクミィ。慎の写メなんて俺達も持ってねーんだからー」
「お前が持ってたってどうせ合コンの餌にするだけじゃん」
「この前勝手に撮ろうとして慎に蹴られてたもんな、南」
「うるっせ!」

 軽口の間に、以前どこかで勝手に撮られた写メが女子高生の間で高額で取引されてたという話が出て、流石の久美子でも慎に同情心が沸いた。

「顔がいいのも考えモンだな…」
「……」
「あれから行事以外でほとんど撮ってないよな。俺だって最新は中学のアルバムくらいしか持ってねーよ」

 弁当の後で3つ目のあんパンを頬張るクマに「食い過ぎだ」と突っ込みながら、久美子はふ~むと考え込んだ。

「…なあ沢田」
「…んだよ」

 相変わらず自分に背を向けたままの慎に、凭れかかるように体重を掛けて顔を覗き込むとフイと顔を逸らされる。

 よっぽど写真を撮られるのがいやなのか。

「お前最近なつみちゃんと連絡取ってる?」
「…なんで今なつみの話になんだよ」
「いや、この前なつみちゃんに相談されたんだけどさぁ…」
「何を」
「なつみちゃんの彼氏の話」
「!」

 妹を可愛がる兄にとっては衝撃的な相談内容だったのか、無言で起き上がって久美子の方を振り向いた慎の目の前にあったのは、見慣れた担任の顔ではなく携帯で。

パシャリ

「おい!!」
「イエーイげっとー!」

 シャッターの嫌な音と共に久美子の満面の笑みがあるのを見て、慎はハメられたことに気づいた。

「てめぇ…寄越せ!」
「いーじゃねーか減るもんじゃなし!」

 携帯を奪おうとしてくる慎の手から避けながら、他4人に「ほらよく撮れてんだろ~」と自慢げに写真を披露した後、おもむろにポチポチと操作をして慎にクルッと振り向き携帯を目の前にかざす。

「沢田のレア写真、待ち受けにしちゃった☆」

パシャリ

 「えへっ」とでも言いそうな笑顔の久美子の耳に届いたのは、自分のものではないシャッター音。
 ハッとして目の前の慎を見ると、ニヤリといつもの皮肉っぽい笑い方の慎が、素早く携帯を操作して同じように待ち受け画面をこちらに向けてきた。

「あっ!!」
「…待ち受けにしちゃった」
「お前ー!!何勝手なことしてんだよ!!」
「こっちのセリフだろ。消せ!」
「やだもん!いいだろ、欲しかったんだから!!誰かにやるわけでもないし!!」

 ガッチリと携帯を胸に握りしめて世間一般の「おねだり」とは程遠い強引さにハー…と深くため息をつくと、自分の携帯とポケットに仕舞い再び寝ころんでボソリと諦めたように呟いた。

「勝手にしろ」
「しますー」

 なんだか2人の間では解決したらしく、またもや隣同士で座り直しヤンクミがしゃべり慎が面倒そうに相槌を打って…通常の昼休みの風景に戻っていたが、全く持って自分達の中で解決できない4人がいた。

「…レアだからって普通待受けにするか?」
「いや、しねーべ」
「ヤンクミってあの篠原とかいう刑事が好きだって言ってなかったか?」
「言ってた気もしますなぁ」

 コソコソと話す4人に

「お前ら何コソコソしてやがる!沢田の写真はやらねーからな!!」

 そんな牽制を掛けながら本人のお許しが出たとのことで、待ち受けにした慎の写メを本人に見せながら「今度は笑えよ~開く度に見えるんだからな!」とかご機嫌な顔で話しかけている。
 それを聞く慎も、久美子ほどご機嫌とはまではいかないものの「仕方ないな」という苦笑を浮かべて嬉しそうに話す久美子を眺めていた。

「慎って…ほんとヤンクミに弱いっつーか甘いっつーか」
 ヤレヤレと肩をすくめて呟く内山に、
「それもあるけどさ」
3つのあんパンを平らげてやっと満足したらしいクマが大きく突き出た腹を撫でながら言った。
「2人とも自覚なしでやってるところがバカップルだよなーっていっつも思うよ」
「「「…ですよね~~」」」

 うちの店に来た時なんか、学校じゃないからか他の客まで赤面しそうなことやってるし…と遠い目をしながら続けたクマに、「うわぁ…」と気の毒に思いつつもその状況を見てみたい衝動に駆られる3人がいた。
 いつの間にか、さっきまでじゃれていた当事者2人は今はピッタリと寄り添いながらお互いの携帯を見て、なにやらピンク色のオーラを出している。
 究極だろう!っていうくらい鈍い久美子はともかく、頭脳明晰容姿端麗人望厚いリーダーまでもがここまで鈍いとは思わなかった、と4人はこっそり肩を落とす。

 人の気持ちには聡いというのに…いや、それだからこそ自分に鈍いのか?

結局昼休み終了のチャイムが鳴るまでいちゃこらこいてた2人に、早く自覚して人目を避けていちゃこいてほしいと切実に思ったとか思わないとか…。

fin

初ごくせんSSです。

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