天然バカップル2
「うっ…」

 変わり映えのしない昼休みの屋上。
 これまた6人でクマが持ち込んだお菓子をそれぞれほおばりながら特に重要でもないバカ話をしながら盛り上がっていたのだが、混じっていたキャンディを口に放り込んだ久美子がそれまで忙しく話し続けていた口を閉じて小さなうめき声をと共にピタリと動きを止めた。

「ヤンクミどーしたん?」
「………うぅっ……」
「のどに詰まった?」
「……うぐ……」

 唐突におさまった話声に皆一斉に久美子を見て苦しげな表情をしていることを心配して声を掛けたが、苦虫を噛み潰したような顔をしているものの、特にそれ以外は変わりない様子の久美子に首をかしげた。

 喉を詰まらせたかと聞いても、うめき声を発しながら左右に首を振るが、涙目だ。

「どうしたんだよ~」
「…だ」
「は?」
「…しゃ、わ、だっ!」
「…やっぱりそれか」

 うつむき加減の顔を覗き込んでいた内山の頭をグイッと横に避けて苦虫顔のまま慎を呼ぶと、呼ばれた慎は訳知り顔で寝ていた体制からむっくり起き上がり久美子の頭を掴んでクリッと自分の方を向かせる。

「あやぐー!」
「わかったからホラ、口開けろ」

 涙目で何かを催促する久美子に口を開けさせると、躊躇いなくその口に指を入れて先程放り込まれていたキャンディを取り出し、「見るからにメロンだろこの緑色…」と呟きながらなんとも自然な流れで自分の口に放り込んだ。

「あまっ…」
「くちがきぼぢわるい~!」

 ベーッと舌を出している久美子に自分が飲んでいたコーヒーを渡し、また再びゴロリと元の体制に戻って行った。
 久美子はというと、渡されたコーヒーでなんとか口直しができたのか、さっきまでの苦虫顔からホッとしたいつもの表情に戻っている。

 戻っているのはいいのだが。

「何やっちゃってんの君たちー!!」
「なんだよ?なんかしたか?」
「いや、したって言うかしたって言うか、普通すぎてしたように見えないけどしちゃっただろ!!」
「しちゃわないでよ頼むから!!」
「だからなんだよ!!」

 あまりの事態に驚いて食べることも忘れて呆然としているクマを余所に、真っ赤な顔になって慌てて責め立てる3人にわけがわからんとばかりに久美子も声を大きくする。

 どうやら本当にわかってないらしい。というのがわかって、代表して内山が2人を制して久美子に向かいあった。

「いいですかヤンクミ。とりあえず先に聞くが、今一体君たちは何をしたんでしょーか」
「何って…あたしのキライなメロン味だったから沢田に引き取ってもらっただけだぞ」
「「「いやいやいやいやいやいやいやいやいや!!!」」」
「ままままてお前ら!とりあえず、とりあえず俺が聞くから!」
「わかった頑張れうっちー!」
「骨は拾ってやる!」
「慎ちゃ~ん…」

 立ちあがって騒ぎだしそうな3人を制して深呼吸をした内山が、もう一度真剣な顔で久美子に聞き始めた。

「俺が言ってんのは、どうしてヤンクミの飴を慎が普通に食べるのかってことでだなぁ」
「だって勿体ないじゃないか!」
「勿体ない以前の問題だろ!捨てろよ!!」
「だから勿体ないだろうが!!いくらあたしの嫌いなメロン味だったとしても、作った人にはリンゴやモモと同じく可愛い我が子同然なんだ!嫌いだからと最後まで食べもせずに捨てたらバチが当たるってーもんだろ!」

 いきなり力説しだした久美子に気圧されたものの、珍しく食い下がる。

「にしてもだな!口移しとか…」
「ばっ…口移しなんてしてねーよ!ちゃんと手で取ってたろ!!」
「そこ照れるとこじゃない上に変わんないから!!もう!ちょっと慎ちゃーん!」
「……何?」
「こんなこといっつもやらされてんの!?」
「…嫌いな味ん時は問答無用で放り込まれる」
「嫌いなもんは嫌いなんだよ!!」
「「「「やってるんだ…」」」」

 自分たちの前で平然とやる位なのだから、恐らくどこででも同じようなものなのだろう。
 しかしどこの世界に「自分が嫌いな味だから」という理由で教え子の口に舐めかけのキャンディをバトンタッチしてしまう教師がいるというのか。
 しかもそれを易々と受け入れる生徒がどこにいるというのか。

「慎!いいのかそんなんで!!」
「…別に。いつものことだし」

 寝転がる慎に詰め寄っても、普段どおりの飄々とした顔で事も無げに答えられる。

「これで付き合ってないとか、詐欺だよ…」

 ポツリと誰にともなく呟いたクマの言葉に、そのあり得ない教師1名と生徒1名を抜かした4名は心底同意した。

Fin

私がメロン味ダメなもんで…(本物のメロンは大好きです)たまに青リンゴやマスカットと間違って舐めてしまった場合、強制的に旦那の口の中に移動するのでそれを慎クミで書いてみました(笑)。
もっとあまあま~な展開にしたかったんですが…精進します。

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