そろそろ好きって言わせてよ
<4>
甘やかしすぎたオレが悪かったのか
甘え上手なあいつが悪かったのか

どうなっても冷たくできないオレが悪いというのは、承知の上。



そろそろ好きって言わせてよ
<4>



 懐かしい門構えの前で、足を止める。


 クマの店を出てから不動産に寄り、新しい部屋の場所を聞いて辿り着いてみれば、それは大江戸一家から目と鼻の先にある新築マンションだった。

 しかも1DKでいいと言ったのに2LDK…しかもやたら広い。

「家賃誰が払うと思ってんだよ…」

 と思わず愚痴が口をついて出てしまったのは、必然だと思う。

 幸いそれなりに向こうでキャリアを積んだお陰で給料が低い訳でもなく、払おうと思えば余裕で払える訳だが。それにしたって。

 当の親父に訴えれば「そのうち結婚するんだからいいだろう。大は小を兼ねるだ」で一蹴された。

 結婚する予定どころか相手もいないのに、何年後の話をしてんだ!とか大までいかなくても中あたりで十分なんだよ!と突っ込みたいのは山々だったが、出たのはため息一つ。

 まあどうしても持て余したら、また引越ししたらいいか…と気楽に考えることにして、荷物を置き大江戸へと向かった。

 さっきラーメンを食いながらクマに聞いた話では、白金は廃校になって色々あった後、今は黒銀に期間限定で勤務しているということだった。
 それがまた結構な問題児ばかりのクラスで、最近ヤンクミに懐き始めたばかりということ。
 オレ達と同じように、全員卒業!を目標に頑張っているということ。
 よくヤンクミが連れてくる生徒達5人が、クラスの中心らしい…などなど、話を聞いている内にオレ達が高校生だった頃を思い出した。

 きっとそいつらも今は、ヤンクミを大事にしてくれてるんだろう。


 大江戸の門は、変わらず自分を迎え入れてくれるかのように開いていた。
 高校の頃は三代目の将棋の相手で呼ばれたりやテツさん、ミノルさんに「うまいものが入ったから」と呼ばれたりで、例えヤンクミが居なくても足繁く通っていた記憶が蘇る。

 玄関をくぐって「ごめんください」と声を掛けると、奥から変わらぬ「へぇ、ただいま!」と時代がかった物言いのミノルさんが姿を現して、オレの顔を確認した途端やっぱりフリーズした。

 …ミノルさんもクマ同様、更に立派になった巨体をブルブル揺らしながら大口を開けて30秒くらい経ってからやっと

「ひぃやあああぁ~~~~~~~!!!」

 叫んだ。

 そんな化けて出たみたいに…。

 ミノルさんの悲鳴(?)を聞きつけて、テツさん、若松さん、菅原さんが「出入りかよ!」と突っ込みそうになる物凄い形相でバタバタバタッ!!と玄関まで来たかと思ったら

「「「のぅわあああ~~~~~~~~!!!」」」

 やっぱり叫んだ。

 本当に期待を裏切らないっつーか…あまりに変わらない雰囲気にポーカーフェイスを保つのは難しく頬が緩んでしまった。

「「「「慎の字ィイ!!!」」」」
「ご無沙汰してます。今日帰国しました」

 もうそこからは怒涛の勢いで、三代目の所まで引きずら…いや、担がれて連れて行かれた。
 襖一枚開ければ、オレが通いつめてた頃と変わらぬ暖かくて深い目を嬉しそうに眇めて

「これで将棋で退屈しなくてぇすむってもんだ」

 と、歓迎してくれた。

「お嬢もタイミングが悪かったッスね~今日ちょうど先生方と飲み会があるっておっしゃってやしたし」

 すぐ慎の字の歓迎会やりたいんスけど、やっぱお嬢がいないと~…と不満顔でブツブツ言っているテツさんとミノルさんの気持ちが有難い。
 何年経とうと、ここは居心地がいい。

「オレも家具とか…色々揃えたりするんで…また明日か明後日あたりに伺います」
「そうか!じゃ、お前ぇさんの好物揃えて待ってるからな!!」
「ありがとうございます」

 大江戸を後にして、とりあえず実家にも寄るとお袋となつみに散々引き止められたが、親父の顔を見て少し話して予定通り生活に必要なものと携帯を買いに行った。

 一応クマには先に教えとくか…。

 最初にクマから連絡をしてもらったから、多分誰かがオレに連絡を取りたい時はクマを通すことになるだろう。
 その時に仲間達にも流してもらえばいいか、と行き先変更でクマの店に戻ると…先程よりも随分と賑やかな店内の声が、店の外にまで響いてきた。

「お前ら、今日はあたしは飲み会だっつってんだろーが!!」

 さっき聞きたくても聞けなかった、懐かしい声に思わず顔が綻んだ。
 

NEXT

あれ…今回再開させようと思ってたのに次回持ち越しになりました…あれー?
話が亀の歩みですみません。次回からはドーンとスピードアップします。多分。
というかアマアマベロベロイロウライロウラなのが書きたくなってきました。